サーミスタ(Thermistor)はセラミック半導体の一種であり、特に熱に敏感な抵抗体です。
中でも特に互換精度に優れ、安定性・量産性を備えているのがNTCチップサーミスタとなります。
NTCサーミスタ材料として一般に使われるのは、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Co(コバルト)などの遷移金属の酸化物からなる半導体セラミクスで、2種あるいはそれ以上の複合酸化物を組成とするスピネル構造の結晶粒が集まった多結晶体となっています。スピネル構造の金属酸化物結晶は、通常は絶縁物に近い高い抵抗値を持ちますが、NTCサーミスタは結晶内部で正孔の移動が起きやすく半導性を示します(下に積層チップタイプの製造プロセスを示します)。
なお、サーミスタは「温度に敏感な抵抗体」を意味する"Thermally sensitive resistor"の略語で、NTCサーミスタのNTCは、負特性(Negative Temperature Coefficient)、すなわち、温度上昇とともに抵抗値が下がる負の温度特性を意味する用語の頭文字です。
NTCサーミスタチップの構造と特性の関係について、最新の積層チップタイプを中心に述べてきました。温度センサ用途を含むNTCサーミスタのチップ化率は、すでに全使用量の70%を超え、携帯機器の小型軽量化と多機能化の目覚ましい進展に伴い、極小積層チップタイプの搭載率も急増しています。
今後は温度補償回路ばかりでなく、温度センサ用途にも積層チップタイプの起用が進むものと考えられますので、これらの先進的なニーズにいち早くお応えするために、形状、特性ラインナップ拡充計画を推進するとともに、許容差のさらなる狭小化を追求した高精度極小品種の開発に鋭意取り組んでまいります。
しかし、小型・大容量を追求する積層セラミックチップコンデンサと基本的に同様の多層電極構造を持つ積層チップNTCサーミスタは、容量成分の抑制というテーマにおいては単板構造に比べて明らかに不利です。この難題を克服し、極小チップを実現するためには、サーミスタ材料の比誘電率そのものを制御する必要があります。
端子電極めっき処理時の耐食性
チップ部品の端子電極は、はんだ耐熱性、はんだ付け性を考慮し、通常は電気めっきにより、ニッケル+スズ(Ni+Sn)膜を形成しています。
しかし、NTCサーミスタ素体は、還元雰囲気に対し、非常に脆弱な性質を持っているため、コンデンサなどに適用されている一般的な端子電極めっき条件では、めっき時に発生する水素ガスでサーミスタ素地表面が還元、浸食され、抵抗値変化や、素体表面にまでめっき膜が形成されやすいなどの問題が発生します。
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